今回は、お酒による健康障害の代表、肝臓についてのお話です。「お酒を飲みすぎると肝臓を悪くする」のは知っていても、詳しくは知らない方が多いと思います。今日は、詳しくご説明いたします。
お酒は細胞にとっては弱い毒ですので、お酒を飲みすぎると、肝臓の細胞が破壊されます。
どれぐらいの肝細胞が破壊されているかは、血液検査でわかります。血液検査のAST(GOT)、ALT(GPT)の数値をみます。AST、ALTが高いと言われた場合、たくさんの肝細胞が失われていることを意味します。
AST、ALTの正常値は、30~40程度です。これは、30~40程度は、自然と細胞が死に、その分新たに再生するということを意味しています。髪の毛やつめが伸びて、抜けていくのと同じです。仮に、ASTが200だったとしたら、回復する30~40との差、つまり160~170の肝臓の細胞が失われていることを意味します。
では、細胞が失われた肝臓はどうなるのでしょうか?肝臓の再生が間に合わないダメージの場合、肝細胞に代わって、繊維(せんい)細胞という、役立たずの細胞が代わりに増殖します。繊維細胞はすぐに増えて、スペースを埋めてくれますが、肝臓本来の機能はありません。皮膚でも、小さな傷は、皮膚細胞が再生しますが、大きな傷の場合、皮膚細胞が間に合わず、代わりに繊維細胞が増殖します。これが、傷跡としていつまでも残るわけです。繊維細胞は本来の細胞よりも硬いため、肝臓のダメージが蓄積していくと、徐々に繊維細胞に乗っ取られて、肝臓自体が硬くなってしまいます。この状態を肝臓の繊維化といいます。
さらにお酒を飲み続け、繊維化が進行すると、いわゆる肝硬変となります。
肝硬変になってしまうと、残念ながらもう元には戻りません。血液検査だけでは肝硬変かどうかはわかりません。
超音波(エコー)の検査でわかります。血液検査の結果、AST、ALTが高い方は、これ以上肝細胞が壊れないようにお酒を減らしてみてください。